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建設業の進行基準、会計じゃなくても分かっていたい収益について。

      2017/01/12

2009年より強制適用が開始された建設業の工事進行基準ですが、現場サイドではなかなかこの重要性が理解しにくいものです。会計や管理部門ではさすがに進行基準がわからないという担当者はいないと思いますが、今回は現場から見て進行基準をどのように捉えたらよいかについて解説します。

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そもそも収益ってなんですか?

会社を経営するにはお金が必要です。そもそも何のために会社を経営するのかと考えれば簡単ですが、当然「儲けるため」です。
儲け=収益と考えてもいいのですが、ここではいくら儲かったかという意味での儲けではなくて、いくらお金が入ってくるのか、という意味での儲けを収益と考えてください。

つまり、建設業でいうところの請負金額を収益と考えてください。

で、この収益ですが、会社はこの金額を正確に内外に対して示す必要があります。内側は、経営者などに対して、外側は株主や証券市場(株式は証券市場で売買されます。これから株主になる人に対しても、正確な指標を提供する義務が株式会社にはあります。)などの利害関係者に対して、それぞれ数字として示すことになります。

かんたんに言えば、いくら売上があがったか?についてタイムリーに正確な数字を出さないといけないということです。

この売上とか儲けとか収益といわれる金額は多くの人が興味を持って、真剣に検討する数字になりますので、会社は義務として必死にこの数字をできるだけ早く、できるだけ正確に把握しないといけません。

会計の仕事は、この収益を正確に計上し、内外の関係者に示すことがその主な仕事となります。

建設業の収益(売上)計上のタイミング

建設業のは請負業です。請負というのは、請け負けなんて言われますが、その契約の性質はお仕事を完成させるまでお金を貰えない契約というものです。実際の建設業の案件は、大きなものになると数億、数年間という長期大型契約になることも珍しくなく、こういった長期大型案件の場合、仕事が完了するまで一切お金が入ってこないということはありません。大概は「出来高」と称する工事の進行度合いに応じた、キリの良い部分部分の完成で工事代金の支払いが行われることがほとんどです。

ただし、これはあくまでもお金が請負業者の懐に入るというだけで、これと収益は必ずしもイコールとはなりません。

収益の計上はあくまでも、工事が完成したとき、となります。上記のような途中でもらったり先にもらったお金は、建設業の場合「未成工事受入金」として売上や利益ではない、勘定として処理されます。

上記のように、工事が最後まで完成して初めて完成ですよと認識する方法を「工事完成基準」といいます。

ところが、先ほど説明したように、完成基準では、工事が終わるまでその工事からの売上=収益は計上されませんので、外からみるとこの会社が今期いくら売上があがったか?の正確な数字がつかみにくくなります。

というのも仮に工期3年の工事1件だけで経営している会社があったとすると、工事が完成するまでの3年間のうち最初の2年は売上がゼロだからです。

これでは会社の中にいても外にいても今期この会社はいくら儲かったのかというのはわかりにくいですよね。毎年同じような工事を1件ずつ受注すればいいじゃないかという反論もありますが、先のことはなかなか見通しが立たないのが現実です。

そこで、世界的にも標準となっている「工事進行基準」を採用して、売上を工事の進行度合いに応じて計上するようにしましょうというのが2009年に工事進行基準が強制適用された理由のひとつです。


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工事進行基準とは

工事進行基準では、工事が完成していなくても、その工事の毎期末の進行度合いに応じて、売上高を計上しましょうという基準です。

進行基準の売上計算で必要な数字は3つ

①工事の請負金額(収益総額)
②工事にかかる費用(原価総額の見積もり=実行予算)
③工事の進捗率(多くの場合、未成工事支出金/実行予算で算出する”原価比例法”という方式を採用しています。)

請負金額や、実行予算は相当程度正確な見積もりである必要があって、また変更の都度適宜見直しが求められます。

また進捗率は、かかった費用の支払いによって計上される「未成工事支出金」の発生によって変化します。よって、この計上のタイミングが適切でないと正確な進捗率が計算できません。

たとえば、実際は、下請け業者や材料業者に仕事をしてもらっているのに、現場代理人が検収を行わないなどで支払を先延ばしにしてしまうと、実際の工事は進捗しているのに、会計側からは工事が進んでいないように見えるなど問題が起こりやすい部分ではあります。

ですので、この3つのなかで進捗率の把握が一番むずかしいともいえます。

適切な原価計上は現場のため?

先にも述べましたが、適切な原価計上は一見すると会計側の都合のようにも見えます。現場サイドは工期や品質に追われ、厳密な支払計上は後回しになることが多いです。実際支払った後にトラブルがあったりすると業者が捕まらなかったりなど問題が回収しにくくなるので、こういう習慣になっているのだと思いますが、しっかりとした契約を締結していれば、たとえ支払が終わった後でも業者は対応しなくてはなりません。

古い習慣をすべて否定するわけではありませんが、状況の変化に応じて要求される事項は時々刻々と変化していくものです、そこに柔軟に対応していかないとおいて行かれてしまいます。

さて、適切に原価を計上することで、現場サイドにどういうメリットがあるのか、ということですが、ひとつにはこれはメリットというよりは、現代の会社の役割にしっかりと工事部門も応えていかなくてはならないということ、すなわち、会社の動向について以前よりはるかにきちんと市場に報告しなくてはならないということです。今期いくら売上がたっていくら儲けたのか、について、しっかりと内外に報告する義務が会社にはあります。

そして、その数字は会計が作るのではありません。会計はあくまで集計をするだけです。数字を作り出していくのは営業であり、工事部門なのです。殊に工事の進捗度合は工事部門以外にはわからないのが一般的です。ですので工事部門、すなわち現場代人がきちんと把握した進捗に応じた支払計上を行わないと、会社側は正確な数字をつかむことができないのです。

そしてもう一つが、正確な原価計上を行っていくことで、会計側からも問題発生について把握しやすくなって来たり、整理、把握がしやすくなるため、現場サイドと協調して問題解決を図ることが可能になってくるということです。

これは、ともすると現場のなかで一人問題に向き合って、ついには破綻することもあった現場代人にしてみれば、心強い味方だと思います。

会計側と現場側で同じ数字を共有することで、いままでバラバラに対応していたことも協調路線を組んでいくことができるようになることがもうひとつのメリットです。

これからの建設業界はますます厳しい環境になることが予想されます。

いままでのように各部門がバラバラではやっていけないと思います。やっていけなければいずれは倒産するしかありません。そうすれば生活の糧を得ることも大変になります。もはや転職できる年齢でもなければその先はどうなるでしょう・・・

そんな未来を避けるためにも、いままで会計のことは会計まかせ、現場のことは現場まかせ、ではなく、現場、会計、管理と一体となった会社運営のためにも、発生部署であるところの現場からのメッセージとしてしっかりと原価の適正計上を進め、進行基準を有効活用していけるといいと思います。

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